2018-01-01から1年間の記事一覧

夏に降る雪

夏に降る雪があるなんて昔話をきみは信じるだろうか? 僕が大人になったころ、テレビの気象予報士は「不思議なことです」と、台本通りにコメントしながらも、昂奮しているのは語気の強さでよくわかった。でも、大人のなかで昂奮した人は、少ないだろう。僕も…

ソーダ、クリームレモンソーダ

氷の結晶の角ばったように雨が地面を打った。晴れてばかりの東京都内、雨音を聞くのは久々のことだ。喜びも悲しみもしなかったが、吐いて吸う空気の違いが緊張を解した。 帰る家があるようなないような。自宅が自宅でない精神状態のときは、もしかしたら、も…

当駅始発快速東葉勝田台行き

中野駅の高架下を歩くとホームのアナウンスがよく聞こえて、橙色の照明ばかりの道路が強い色に思えて、ふと冬だと思った。今日はひときわ冷たい風が身体中に当たり、眼鏡もカチカチに凍った風体でいて、ようやく私は12月にいるのだ、と気付いた。 クリスマス…

伏し目がち

伏し目がちに生活をしていた。私が普段生活をしていて、よく置いている視線の角度は、水平からやや斜め下。ひとりで過ごしているときはさして支障はないかもしれない。が、人と会話しているときにも、数往復のやり取りを終えると、テーブルに置かれたコップ…

ブログを再開していく

1か月以上、書けていなかった。 このブログの文章を書くにあたっては、率直に、「書きたい」との意欲のほか、きっかけを作っていない。そのため、意欲如何では毎日のように更新することもあれば、最近のように、しばらく沈黙することもある。 正直、今も「書…

2018/08/14

明日は旅行の初日。といっても、出国は夕方過ぎになるため、日中は荷造りの最後の確認でもしつつ、体力を温存して過ごす予定だ。 出国、と書いたように、この旅行は国内ではなく、海外に飛び出してのものだ。久しぶりの海外旅行。母方の親族の計画にお邪魔し…

2018/08/13

雷の音は私を昂奮させた。わざわざ強調することはないのだが、兎にも角にも、落雷の衝撃は私をひどく昂奮させた。何かの性癖なのだと思うが、何かを荒らす存在があると、安定を揺るがす何かがあると、私はいてもたってもいられなくなり、突き抜けた快感と、…

2018/08/12

眠気が強い日だった。 日曜日。多くの人々が、何もしない日。もしくは、遊び耽る日。なんだか安心だ。こういう日は、何もしなくても、遊び耽っても、とがめられることのなく、胸を張ったっていいのだ。 私は、かれこれ1年以上、求職と療養とを行ったり来たり…

受験生のころのあれこれ

曲がりなりにも受験生をしたことがある。そのワンシーンをどうしても思い出すときは、たいてい中央線で市ヶ谷のお堀を通っているとき、くらいのこと。 都立高の卒業学年にいて、卒業単位もぎりぎりだったなか、一丁前にも理想的な進学プランを立てていたのは…

夏の副作用

ふと、連絡をしてみようかと思い立った、が、やめてみた。ふと恋しくなった相手の顔は手に取るように浮かぶものの、どこか、今の私は閉ざした気分でいたのだ。これまでなら、すぐにスマートフォンを手に取って、なにかひとことを送っていたのだろうが、その…

7月8日

汗がたまる、湿度の高い真夜中。東京はこんなにも晴れていて、そういえば昨日は七夕でした、テレビの中継で泥水と濁流に浸しかかった笹の葉が、カラフルな短冊とともに、右に左に荒れているのを、ただ眺めているうちに、ベガとアルタイルの逢瀬はすぎていき…

2018/07/05

切ない寄る辺に文章の場があることは、幸せなことかもしれない。たとえ今書くことができないとしても、長いものが書けないとしても、私は、唯一無二のシェルターを手のひらに掴んでいるのだ。その事実により、まるで私そのものを貴く佇ませることが、決して…

現代の表情

夜の寂しい街灯は、澄んで尖った私の思考に、影をつくった。肉体も感情も、近年の白色LEDではてんで映し出されないみたいだ。 帰りの電車内、無数の帰宅者のひとりの、吊革を掴む手の緩んだその一瞬に、その人の心が現れるのだと思う。朝のラッシュの詰め込…

明日東京がなくなってしまう

東北新幹線はやぶさ号新青森行きは、低下する気温と溜息を集電し時速320kmで北上するみたい。でも私の乗った日には余震を理由に速度を落として運転したよ。でも揺れなかった、揺れていなかったはず。私には溜息の力が心許ないから、周りには迷惑をかけたんだ…

ラーメンとラジオ

ラジオのかかる店で、ラーメンを食べた。それは、新宿駅周辺に数店舗散らばって開いている熊本ラーメンの店。私はその店しかお気に入りのラーメン屋がない。「ラーメン」となると、この熊本ラーメンの豚骨細麺、の、絵だけが浮かぶ。ほかに記憶に残るラーメ…

Instagram

お知らせ。Instagram、このところは毎日更新をモットーに、主にフィルムカメラでの写真と、添える、にしては長すぎるプチブログ風な文章を載せています。絶賛、不調中です。そのために、なにか日々楽しみたい。そしてめでたく、毎日の投稿が楽しくなってきま…

強欲のため

私という人間は強欲のため、ひとつ得たもののその倍量を欲しがり、倍得たものの背後に隠れるものに惹かれだし、(倍得たもの、捨てる)見え隠れする何かを明らかにすべく手を尽くし、やがて晒され、高く積まれた予想には程遠い美しい姿に呆気にとられ、私の…

発展的に生きてほしい

けたたましい音楽を耳から直接にねじ込み、他のあらゆる思考をかき消す。もはや私は今まさに流しているサニーデイ・サービスの盲信者になったふりをして、実際は、信仰の方角をあらぬ場所へと向けている。明日も生きたい、明後日も生きたい。生きる利点づく…

六月の季節

六月。夏はまだ先です。夏はまだ遠く。今はまだ、鼻先を、湿気た長雨がくすぐりかけたような、六月の季節のはじまり。 夏。毎年のように熱性の記録更新を果たす夏が、目の前の窓から遠く、スカイツリーの先あたりで、蜃気楼に乗せて揺れているのが確認できそ…

(創作)春の海

海水は冷たかったですか。それともあたたかさを感じましたか。きっと海水が容赦なくあたたかかったのでしょう。私は二度と、海に行きたい、などと思うものか。きっと、きっと、ぜったい、負けてたまるか。 終電近くの東京駅発東海道線を、南に西にひた走りゆ…

夏への積み荷リスト

たとえば、 よく晴れた青空に、 五月の陽射しに乱反射する街の光に、 藤の花の、 子どもの雨靴みたいな、 可愛い、うすむらさきの花弁に、 ソフトクリーム、 真っ白なよく溶けるソフトクリームと、 五月の陽射しの強さに 細めた視界に残存する、 バラの花の…

2018/04/30

今朝目覚めてすぐに予感した。 今日は、苛立ちの虫が猛威をふるうだろう。 それは、出勤時の、ちょうどいいタイミングで放送されるテレビの天気予報で、東京は晴れ、最高気温は24℃、対して千葉はくもり、最高気温は少し下がり……と、気象予報士が正確な予報を…

ラブレター

きっと、日本という国は、貧しくなって久しい。お金も資源もなくなって、買いたいものが手に入らなくなって、価値あるものも手放すしかなくって、生活って、なんだっけ?なんて問いが浮かぶほどに生活が保たれていない。 そう、日本という国が、貧しくなった…

旅2日目:青森

尻切れトンボになっていた旅行記を、7か月越しに繋げます。 旅の記録なので、楽しい気分で書いていきます。どうぞよしなに。 sunnyweekend.hatenablog.com 旅1日目の記事は、まさに旅先のホテルの一室で書きあげたものでした。なんだかやけに高揚しているし…

2018/04/21

夜にさしかかり、ひっそりと苛立ってしまいました。苛立ちの原因はなにか、 それは、 3枚じゃ暑くて2枚じゃ寒い掛け布団のいじらしさ、目が覚めて起きあがる労力に、身支度全般の労力もそう、文庫本を家に忘れてきたことも、夏がはじまる気配が、ざん、と街…

2018/04/20

近頃のこと、なにも話していなかった。部屋には、数日前に半分だけ動かした掃除機が、片隅に追いやられて、ずっともう半分のスペースの掃除のときを、待っているわけです。でも、掃除、する気力がありません。掃除をする気力がないのです。となると、この東…

青い雨

青春の成分を細やかに解析したら、はたして鬱性はどれほどの伸びをしめすでしょうか。青春はひとを殺すことを、せんせい、若者のみんなに教えてあげてください。それを使命として、わたしのともだちを自殺からすくって。 せんせい、テレビはみますか。せんせ…

希望

希望はあるわたしたちに希望はある希望はある、希望は数多ある数多ある希望、希望は選び掬える選び掬われた希望にわたしたちは現在と生きる現在は希望の粒子粒子はすべて希望といえるかわたしたちの粒子はちゃんと人肌をしているか人肌が最後の希望というの…

おしらせ

1年ほど前に書いた記事が、バックアップデータとして残っていました。そのバックアップデータを、この場で展開し、公開させました。『前のブログの記事』カテゴリに入っています。なつかしい。ぜひ読んでください。

2017年05月15日

タイトル通り、2017年05月15日にワードファイルに残していた文章です。卒業して間もない、ぐちゃぐちゃでがむしゃらに壁打ちしていたころのもの。 5月も半ばに入った。天候が揺れに揺れる。暑さに適応する準備をはじめた途端、肌を逆なでするような寒い日々…