2019-01-01から1年間の記事一覧

創作『此岸より』

「青春」を遠く眺める場所に身を置いた私は 過去を懐かしむには早いとはいえ もうこの手に「青春」はいないある人がよく泣きよく嘆き哀愁を着た場面に またある人が居合わせただけのひとつの事象から 尊さを贈り合い輝きを与え合う 夢を誰もが見ていたのだ「…

創作:花を持ち帰る

ひとりの家に花を持ち帰り、 暗い部屋に暖色の灯りがともる。駅前花屋の美しい花の中から、 ひときわ目を引いた花を買った。 牛乳瓶に活けると、ちょうど背の丈が合う。 茎の緑が色濃く発色している。 人間でいう血管に滞りなく栄養が注がれているのだ。今萎…

たとえばコーヒー、あるときはカモミール

カフェインを摂りすぎるのは身体に良くないそうだ。煙草と似たような作用で、やめられなくなるか、やめたあとに禁断症状が起こる。たとえば、震えとか目眩とか。 とはいえ朝に飲むコーヒーは格別なので仕方ない。 職場で、給水機から簡易的に淹れたコーヒー…

読書をしている

‪心の中が散らかったときは、いつも読書をする。 内側に閉じる行為のなかでも「読書」は根本になるのもしれない。‬ ‪録音していた菊地成孔のラジオを久しぶりに聴いた。たくさんのオンエアからシャッフルで選んだその放送回は、ちょうど海外の音楽ライブで銃…

2020は創作の年に

もちろん、仕事中心で。「仕事とプライベートとの両立」は大事だと思い、来年、2020年のプライベートにつきましては、いざ、創作!との標榜でやっていきたいなと思っております。 5月の文学フリマ東京に1年半ぶりの出店し、その翌月には盛岡へ。何をするか?…

月(2019)

‪心が理解するには時間が掛かる。 緊張の糸が張る状況とは、何らかの防衛本能を立ち上げる場面だ。自分にとっての踏み込めない場所は、おそらくは誰にとっても不可侵な領域なのだと思っている。人が亡くなるのは誰にとっても分からない。 とはいえ張り詰める…

東京に帰る

2019/11/14盛岡から戻りました。 祖母を無事送ることができました。 悔いはありません。 盛岡はマスクを外すと空気が澄んでいました。 雫石川を眼下に通夜を行い、 通夜払いでは、久々にお会いした親戚と 岩手の酒「あさびらき」を何本も空けました。そのと…

盛岡へ

2019/11/12祖母が亡くなった。昨晩、その報せを受けてなぜか銀杏BOYZを聴いた。滅多にないがスピーカーと一緒に歌う。 明日から盛岡へ。寒いらしい。コートも用意した。思い出すことは数多ある。念のためiPadとキーボードを持っていく。朝、考えごとをしなが…

眠りの色をつける

先週から日記をつけている。寝る手前に静かな部屋で分厚い日記にペンを走らせる。朝からの出来事を振り返って順々に現在へ遡上していくと、現在に近付くまでの道のりが遠く感じられた。どこを摘んで書こうか考えながら進み、大きめなイベントには熱を入れ書…

台風19号に想う

動悸が強まりながら、情報を集め続けた。河川の氾濫状況、ダムの貯水量、台風の進路。 頭が金切り声を上げる寸前まで、想像し続けた。最悪のシナリオが通り過ぎたあとの東京の光景、目黒川を目の前にある職場、今後の生活。 嵐が去ったあと、窓を数センチ開…

親離れ

"ちょっとした驚きがあった。驚きとまた、ちょっとした安堵感。facebook並みに放置をしていることでお馴染みのLINEのタイムラインに、せっかくだから何かを書こうと、先日、夜の母校の高校にふらっと立ち寄った話をした。すると、10分もしないうちに、反応が…

【散文詩】硝子

朝霧にかかる灰が 車窓から薄桃色の街を映しだし 煙突から浅緑の煙がのぼる 電波塔から発された電子の粒が やがて雨となり街に降り注ぐ 割れた硝子の一片を拾い上げた 丘の先はまた丘 苺畑を抜け葡萄は香り 辿り着いた白樺の森 私は今もここにいる 枝垂れ柳…

秋の風

風が吹く。落ち葉が地面でからからと転がり、草の乾いた匂いを感じた。 この日最後の授業を終え、帰路につく。見上げれば人気はまばらだが教室の灯りはそこかしこに煌々とついていた。11月の冷たい空気が頬にあたる。 東京郊外の新興住宅地は宅地化が鈍く、…

9月

午後から雷雨になるらしい。朝から湿度もあり、傘は面倒で、さらには埼京線は遅れている。中高生の新学期の開始とともに、朝の混雑は増した。階段の裏、さらにグリーン券売機の裏のベンチでひっそりと佇む女子高生を見かけた。車内では、黙々とスマホゲーム…

月曜日のご挨拶

おはようございます。 みなさんお目覚めはいかがでしょうか。 働きはじめて5ヶ月目に入りました。 慣れないことばかり、知らないことばかりではありますが、できるところから慣れていき、少しずつ学んでいる毎日です。知らないものを得ていくのは、楽しいこ…

リキュールが恋しくない

リキュール。海外旅行から帰ってきた母のお土産だ。牛乳と併せて飲むと美味しいらしい。ココナッツミルクの風味でいて、とろんとした心地になるのだそう。最近はそういったアルコールを選ぶことはなくなったから、いい機会だと思った。 かつては、カルアミル…

Sony α7ⅲを買いました

お久しぶりです。長々と更新が途絶えてしまいましたね。書く習慣がすっかり消えかかっていました。すらすらとした文章を書けるまで、ぽつぽつと文章を書いていきますね。今回は、ライトな感じでいきましょう。 さて、今回はタイトルの通りです。ありがとうご…

よだかの星

よだかの星を食べました。 ……との書き出しがいかにクサくてイタいかはよくわかりますが、これは表現描写のものでなくて、実際に口に運んだのだから仕方がない。 ぴんときた方もいらっしゃるだろう。『よだかの星』とは、宮沢賢治の短編名だ。岩手に生まれ、…

いつかどこかで

柄にもないことを言うようだけれど、悩みや落ち込みがぐんと減ったんだ。1日中沈殿した心地で朝から晩までの日の流れを、対岸越しに見つめている。そういったライフワークさえちょっとした遠くの昔に感じてきた。しっかり苦悩している奴だけに信頼感を抱いて…

令和への誓い

より多くの毒にはより多くの毒を持って制する図式に基づき、私たち平成世代のメインカルチャーはカジュアルなハードセックスへの傾倒を進めているが、それは愛の話題ではない。 現在の私たちは、体内への毒の供給量がゾーンに入った狂い方をしているために、…

梅雨の前

傘を持たず家を出て、行きの電車で雨が降り始めた。午前9時すぎの電車は急に本数が減るが、乗客の減り具合と釣り合わない。山手線渋谷品川方面行き。無理にでも乗り込み、ドアにへばりつく。高田馬場に着くと、さらに混んできた。早稲田大学の学生をしている…

高橋ささら

おそろしく東京は暖かくなり、追いつけない身体が置き去りになったまま。春に気付きだしたころにはその季節は折り返しを過ぎている。花粉に喘ぎながら見る桜。こいつ、知らないうちに咲きやがった。見事な姿。美しい。どうしたって浮ついている。下から望む…

テーマ創作:今世紀のある休日

「マンデリンがお好きと伺いましたから」と喫茶の店主が話しかけてきた。 エプロン姿の彼の右手にはコーヒー豆の袋が。100グラム何百円で売られている、持ち帰り用のものだ。「これ、どうぞ」と差し出された手が温かい。 「え、いいんですか」と遠慮がちに返…

春だったね

桜並木になる予定の枯れた木々が互いの枝をぱしぱしと痛めつけている冬の道を歩いている。生きるそのものが楽しいこと、悲しいこと、の二極でことが進むようにしか思えなくて、あそこに綿のような花が咲き誇った頃には悲しみの表情で見上げていそう。 桜の咲…

散文:風

風。窓を無造作に打ち付ける音で目が覚めた。外はまだ暗い朝。カーテン越しの空は紺から燃えだす直前のよう。今日は強風に荒れるのだろう。春一番って、いつのことだっけ。そもそも、そんな言葉は古来からあるわけでなくて、昭和歌謡がヒットしてから浸透し…

散文:ブルー

ビー玉。触れる機会の少なかった私は、体つきばっかり大人になった今でさえ、ほら、ビー玉を見るとときめいてしまう。手に取ると思ったよりずっしりと重みを感じ、貴重な生きものに触れている気になった。ガラスがうっとりするほど純に輝いていて、このビー…

宛先はドトールに

安くて居心地のよい喫茶。日本津々浦々に繁殖する休息の旗手。といえばドトールのことである。ところでみなさんは、ドトールカードをお持ちですか。そのまえに、ドトールに通っておりますか。そもそも、ドトールを知っておりますか。私は昨年秋まで、ドトー…

散文:交差点

傲慢さを感じている。外は雨が降っているから、気温が急に乱高下をはじめたから、いろんな予定が区切りのついたから、そもそも、夜だから……。さまざまな言い訳は思いつく。だから私は違うんだ、と、今すぐにでも口にする準備はできている。ただ、また一度考…

散文:いろいろ

コンタクトレンズをつけることのいちばんの利点は、メガネをかけずに済むことだ。そりゃあそうだ、というはなしなのだけれど、メガネをかけずに済むならば、それはたいへん嬉しいことだ。メガネの重さは侮れない。結構、顔から肩にはじまって、凝りが全身に…

Re-当駅始発快速東葉勝田台行き

冬が寒いものだと、あらためて感じ入る季節になった。東京の冬は一面的かといえば、実のところは違う。1月までの乾いた冬と、2月からの湿気った冬。この街は季節が巡るうちに忘れてしまい、冬が来るたび感覚を取り戻すのがいつものことで、そこでしか生活し…