2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

春だったね

桜並木になる予定の枯れた木々が互いの枝をぱしぱしと痛めつけている冬の道を歩いている。生きるそのものが楽しいこと、悲しいこと、の二極でことが進むようにしか思えなくて、あそこに綿のような花が咲き誇った頃には悲しみの表情で見上げていそう。 桜の咲…

散文:風

風。窓を無造作に打ち付ける音で目が覚めた。外はまだ暗い朝。カーテン越しの空は紺から燃えだす直前のよう。今日は強風に荒れるのだろう。春一番って、いつのことだっけ。そもそも、そんな言葉は古来からあるわけでなくて、昭和歌謡がヒットしてから浸透し…

散文:ブルー

ビー玉。触れる機会の少なかった私は、体つきばっかり大人になった今でさえ、ほら、ビー玉を見るとときめいてしまう。手に取ると思ったよりずっしりと重みを感じ、貴重な生きものに触れている気になった。ガラスがうっとりするほど純に輝いていて、このビー…

宛先はドトールに

安くて居心地のよい喫茶。日本津々浦々に繁殖する休息の旗手。といえばドトールのことである。ところでみなさんは、ドトールカードをお持ちですか。そのまえに、ドトールに通っておりますか。そもそも、ドトールを知っておりますか。私は昨年秋まで、ドトー…

散文:交差点

傲慢さを感じている。外は雨が降っているから、気温が急に乱高下をはじめたから、いろんな予定が区切りのついたから、そもそも、夜だから……。さまざまな言い訳は思いつく。だから私は違うんだ、と、今すぐにでも口にする準備はできている。ただ、また一度考…

散文:いろいろ

コンタクトレンズをつけることのいちばんの利点は、メガネをかけずに済むことだ。そりゃあそうだ、というはなしなのだけれど、メガネをかけずに済むならば、それはたいへん嬉しいことだ。メガネの重さは侮れない。結構、顔から肩にはじまって、凝りが全身に…

Re-当駅始発快速東葉勝田台行き

冬が寒いものだと、あらためて感じ入る季節になった。東京の冬は一面的かといえば、実のところは違う。1月までの乾いた冬と、2月からの湿気った冬。この街は季節が巡るうちに忘れてしまい、冬が来るたび感覚を取り戻すのがいつものことで、そこでしか生活し…