創作『此岸より』

「青春」を遠く眺める場所に身を置いた私は
過去を懐かしむには早いとはいえ
もうこの手に「青春」はいない

ある人がよく泣きよく嘆き哀愁を着た場面に
またある人が居合わせただけのひとつの事象から
尊さを贈り合い輝きを与え合う
夢を誰もが見ていたのだ

「青春」の効力が切れ始めた時
薄目を開けた視界の先には
絶えず明るい街並みが広がっていた

ただただ涙を呑み別れを告げる
明るい街のひとりになった


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essay

青春期は、余りあるエネルギーが万能感と不全感の表裏となり、それらが激しい痛みを伴って自分自身を追い詰める。全ての感情に美しさが与えられることも青春期の特徴であり、多くの人は日々漠然とした哀しみに暮れる。
しかし、いずれ青春期は抜ける。万能感と不全感、与えられた美しさは幻想であり、自分自身が作り上げるものであると知る。

私たちは、今から美しい。