カタカタ

今日は、
都内のオフィスまがいのスペースで、仕事まがいの仕事をしていた。
パソコンに向かい、ひたすら童謡の歌詞をワードに書き写す仕事。
仕事まがいらしく、賃金は発生しない。
賃金が目的ではなく、ましてや童謡も目的ではないので、いい。

歌詞を打ち込みながら、
わらべ歌がなじんでいた幼い私を思い出していた。
ムンとした湿気と、視界を遮る雨だれの降りしきる日に、
自転車の後部席、すっぽり埋まった合羽の合間から、
ゆったりペダルをこぐ母の背中を、ぼおっと眺めていたこと。
夕暮れ、伸びる影が交通公園から遠ざかる帰路に、
父がわざと自転車を蛇行させ、うしろでキャッキャと笑っていたこと。

ふと思い出していた。
オフィスまがいで、仕事まがいをする私が。

まさかまさかの、つくり話のような事実。
まるで私でなかったような幼い私は、
私のはずではない現在の私に直結していたなんて。
幼い私は未来の私を思い描くようなことはしなかったが、
それでもあまりにかけ離れていて、糸がプツンと途切れているかのよう。
路線図に伸びる工事中の新路線の点線のように、
私のことが、出発点も架空、着地点も架空にしか思えない。

さっさと歌詞を移しきったあとの休憩時間は、すんと眠っていた。

 

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軽々しい嘘をつきたい。
歩道を並ぶ3人の高校生がいたはなしをするときは、
4人横列になって道をふさいでいたよ、と報告し、
電車の到着が2分遅れたときは、
遅れてごめんよ、電車が5分ズレててさ、と詫び、
900円払って堪能したカフェのカツサンドは、
あれは800円だったよ、と薦めたい。

かといって、嘘は嘘なので。
ひとつひとつ染みが付着していくことは覚悟のうえで。
なしですね。