あのトイカメラ

ベタベタのトイカメラを返品交換してもらうことに。
どれほどのベタベタかというと、
触れたとたん、指に移ってしまうほどであり、
放置していたら、埃がまんべんなくくっついてしまうほどのもの。
封を開け、はじめて手に持ったときから、
「あ」
と、すべてを察した声をだしてしまったものの、
私は決して声を発していないぞ、
今後のカメラ生活を楽しもうと意識を逸らした。
……が、やっぱり我慢がならず、販売元の会社に連絡を。
丁寧に対応してもらい、交換の運びとなった。

このトイカメラは、フィルム式なのだ。
で、私はフィルムを入れて、数枚撮ってしまった。
安直にやらかしてしまったので、
39枚撮影可能のフィルム、この数日間ですべて使い切りたい。
それから首尾よく返品したい。
空撃ちのような熱意に燃えているのは、
フィルムがただただもったいない、というしょぼい理由があるからだ。
外装がきったないトイカメラを携えて、今日も私は外へ出る。
1,000円のフィルムを使い切るためだけに。

 

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高校時代の友達に会った。
彼も私も雲行きが怪しい。
過去も今後も、目の前にはやや立ち込めた濃霧があって、
「濃霧が充満していますね」と誰に告げるでもなくわが身にうそぶく。
ただ、やみくもには歩いている、歩いてはいますよ、
くらいの、ちょっと痛みかけの食材ほどのダメージでいたい、
と主張する同士なのがとことん痛い。

それでいて、いっちょまえに、別れ際には健闘を祈り合う。
なにを健闘するのかもふらふらしていて曖昧ではあるが、
腐らないための健闘のお祈りなのだと思っている。
トイカメラの汚さをしっかり突く友達は大切だ。