美味しいビールを飲んだ夜

はじめてひとり飲みというものをした。
新宿西口の思い出横丁。
なぜよりによって、人生初のひとり飲みを、
そんなディープな場所に選べたのか、
自分の意外な胆力に驚く。

 

いや、でもたしか、
そう、あの日は日曜日で、
誰も飲む雰囲気でない街の表情で、
その中で私はボロボロの身なりをしているような気になって、
頭もとうとう薬では手の施しようもない気にもなり、
つまり、もうダメだ、とフラフラになっているなかで思い立ったのだ。

カウンターのこじんまりとした店に入り、
生ビールと串焼き盛り合わせを注文した。
最初は慣れない環境にアワアワとビビっていたのだが、
しだいに、自分の居たいように居ればいい、と思えてきた。

運ばれた生ビールを口に流し入れると、
これまでに感じたことのない、喉への冷えた刺激があり、
「もしや、これがのどごし!?」と、テンションが上がる。
体質的に酔いやすいアルコール類がビールで、
手っ取り早くフラッとしたいときには飲むが、
「美味しい」と思って選ぶことはそれほど多くなく、
「苦いが飲める」ほどの認識だった。
けれど、その生ビールは、挙動不審になってしまうほどの美味しさだった。
そのお店の入れ方も上手なのかもしれない。
でも、それ以上に、
「働いたあとの」「暑い日の」ビールは美味い、の法則に則ったのだろう。
働いていないけれど。毎日が日曜日だけれど。

今すぐにでもぜんぶ辞めてやろうかくらいの威勢のよさが、
生ビールジョッキ1杯、それと串焼きで、
すっかり元気さと入れ替わり、
生きるのに惚れ惚れするような気になって、思い出横丁をあとにしたのだ。


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もったいぶらずに、
ビールなり、サワーなり、カクテルなり、
飲みたい時に飲んでしまえばいい。
それで戻せるものがあるなら、いいかな。

 

おはようございます。