今朝にみた夢

新・元号が決まったことを、今朝の新聞で知った。「清明」だそうだ。清明、かあ。まさか、二十四節からコピペだなんて、誰が予想しただろうか。ふつう、"ない"熟語が元号になると聞いたけれど、そうかあ、清明かあ。4月のはじめごろ。雨水、啓蟄春分、そして清明。ひとつひとつ取り出しても、"清く明るい"、そんな時代が始まる。そっかあ、清明時代が始まるなあ。



友達が、ひどく疲れているところを、駅でみかけた。今にも座り込みそうで、あ、大丈夫かな、と、声をかけた。間延びした感じに呼びかけたら、思いのほか、彼女ものんびりと返してきた。

なになに、どうしたの?
すんごい疲れちゃったあ。
終電、もうすぐだよ?
あ……そっかあ。

軽くてのんびりした会話をして、私は「歩ける?」と訊いてみた。友達は、しばらく考えて、「あるけないかも〜」と甘ったるく言ってきた。
ちょっとだけ、彼女から、なにかを感じた。あれ?なにか、甘ったるさと企みがあるんじゃないの。なにか、思っていることがあるんじゃないの。訝しくも思いかけたものの、そうだ、私は、これからなんでも信じるんだった、と、我に返って、しっかり地べたに座ってしまった友達の手を取った。早くホームに行かないと、昼間の終電にまにあわない。

どうやったら行ける?
負ぶって。
おんぶ?

駅のなかで友達を背負うのも、なんだか恥ずかしい。でも、昼間の終電にどうしても乗せたかったから、私はいっさいの恥じらいを捨てて、背中に彼女を負った。
今は2番線、たしか友達は〇〇線だから、15番線だ。間に合わせないと。走れ走れ。
と、汗をかきながらダンダンと走っていると、「わたし、間に合わなくていい」と、背中のうしろから声がした。

なんで? やばいでしょ。
やばくなあい。
どこに行くの?

ただでさえ飛び乗れない焦りがあるのに、友達はゆったりと話している。はやく、どこに行きたいのか言ってくれ。そこまで運ぶから。そう促して、それでもしばらく待ったあと、彼女はこう切り出した。

ホテル、ホテルいきたい。

それを聞くや否や、身体中が冷却されていくのを感じた。私の身体が冷たい物になっていく。のに反比例して、彼女の身体がバグを起こしたように熱くなっていることに今やっと気付いた。

なんで?
いきたいから。

声まで氷みたいにして訊いたのに、会話にならない返事。

やめなよ、やめようよ。
やめなあい。
こわいから、やめよ。
たのしいよう。
あとでつらくなるよ。
たのしいよう。

「たのしいよう」がたまらなく怖くて、たまらなくなった私は友達を殺すことにした。刑法の授業で、これだけは罪に問われない、と教授が言っていた。

寂しい?
悲しい?
虚しい?

あっ、言っちゃった。言うつもりだったけど、本当に言っちゃった。身体に熱を感じる。紅潮しているのも、血が湧いているのも、私の中から見いだした。それなのに、彼女からの返事はなかった。いつまで待っても、言葉がない。
本当に殺しちゃったのかな、と、背中に手を伸ばすと、汗でびっしょりの私の服だけで、あとはなにもなかった。友達は、友達はどこにいるんだろう。あれ?どこに??



明らかに稲毛のホームで、「千葉みなと〜」とアナウンスが聞こえる。嘘つけ、稲毛だここは。私は津田沼に行きたいんだ、戻ってよ。なのに、今度は総武線快速が動き出しもしない。腹が立って、周りの乗客と一緒のタイミングでホームに降りたら、11両の先頭あたりで、長く繋げすぎたプラレールみたいに、数両が横倒しになって脱線していた。あれ?派手にやったなあ。怒りもすぐに吹き飛んで、事故の観察をしてみることにした。どうやって脱線したんだ?
素人探偵か、素人事故調査チームに耽っていたら、ふと上空で、轟音が聞こえた。なんだろう。顔をあげると、飛行機、よりも速く、夏の青空を切り裂く物体が見えた。しかも、なんだかこちら側に近づいてきているぞ。
あ、これ、ミサイルだ。あの国から殺しにきた、ミサイルなんだな。へえ、へええ。こんな感じで死んじゃうんだ、私。
ぼんやりしているうちに、いよいよ白いミサイルがこちら側に近づいてきた。あ、死ぬまで何秒だろう、とカウントダウンを始めるも、的ははずれた。私は稲毛だとするなら、幕張本郷のほうにいったかな?それほどの衝撃音はなかったが、たぶん、誰かに命中したのだろうな。
すると、2発目がすぐさま飛んできた。今度は近い。あ、ミサイルだミサイルだ。こっちにきている、こっちにめがけて殺しにきているぞ。でも、また外れた。たぶん、西千葉のほうに落ちた。音がやや大きめ。死が近い。
3発目は、稲毛のホームの横に落ちた。駅前ロータリーは壊滅だろうか。4発目。次はホームの端っこ。振動がした。改札行きの階段に座っていた私は、青空を眺めていた。たぶん、5発目だな。かれらは私を知っているはず。
予想どおり、5発目はちいさな丸い点からはじまった。丸は徐々に大きくなり、ミサイルの円錐形を認識して、もっと大きくなって、あの国旗が見えて、あと、さん、に、いち、



の、ところで目が覚めた。夢であるため、もちろんフィクションです。夢でみたのはノンフィクション。今日休みでよかった。