【本の感想】『ROLLER SKATE PARK』 小幡玲央・著

『ROLLER SKATE PARK』
小幡玲央・著



大学生だった頃の記憶と匂いを残し東京で日々を送りつつ、自身の内面下につぶやきを投じ、少し虚しい水面の波紋を写実的に描写する——。

本書は、20ページというボリュームのなかで、8篇のざらついた生の述懐が収録されている。この20ページという薄めといえるzineには、凄まじい威力がある。他人事とは思えない胸のざわつきを覚えた。
なぜだろう。



『DJ PATSATの日記 Vol.2』というzineを数ヶ月前に読んだときも、そんな思いになった。
筆者は、大阪・淡路で音楽と自転車、そしてzineを販売している『タラウマラ』の店主、土井政司氏。
zineの凄みというのは、市井を生きるひとりの綴る言葉が、同じく市井を生きるひとりの読み手に受け取られる点だ。

この人のzineは、とにかく防御物を一切身に纏わず、常に攻めの姿勢を崩さない。自分のため、家族のため、周囲のため、そして未だ知らぬ誰かのために。
そして、未だ知らぬ誰かのひとりである私は、読後、自問が止むことはなかった。


「お前はどうだ?」



話は戻り。
本書は、東京と、東京「的なもの」にすり減らされつつ、流されそうになりつつ、屹立している。澱みと虚さを抱えこみながら、抗っている。筆者自身でも、もしかすると、明確な理由はもたずに、しかしながら屹立し抗い続けるのかもしれない。
そんな本書の姿はまさに筆者であり、それぞれに感ずる読者一人ひとりでもあった。


しかし。
一人ひとりには、それぞれに場所や仕事(生産と消費の成員となる!)があり、それに応じたカラーを身に纏って、日々生きていく。
私も、仕事をしてきて、それぞれにカラーがあり、すでに自分も選び始めている。
他方、カラーを知ってしまうと、「まだよくわからない」「無色透明」で「不安定」な状態にはなかなか戻れない。もはや虚しさに慣れ、うまくダシにしてしまったのだ。
そんななかで、本書はまるでグレーがかった透明色として、不気味で無機質、心に低温やけどを促すような「東京(的なもの)」の姿を捉える。読者は何を思うか。どんな防御物も貫通させる本書の念は、私たちになにを影響さすだろう。



どこかの場所で今日も生きている人が書いた作品は、いろんなバリアや身に纏うカラーを鋭利に突き破って、胸のうちに刺してくる。
たしかにプロ野球のピッチャーが投げた豪速球が如何に凄まじいものかを知るのは、相対し受け止めるキャッチャーのミットの感触と手のしびれに勝るものはない。

それにしたって、
「想い」がダイレクトに向かってくるのはなぜだろう。



読後、自分自身への問いかけは続く。
もちろん、安易に簡便な結論を出す必要はない。

「お前はどうだ?」