2021/03/31 春は変なことを考えやすい

目黒川の桜は散り始め、川面は大量の花弁が浮かんでいた。花筏


昼休み、いつ使うのか分からない、恐らく緊急時専用の船着場のベンチで腰掛けていると、唸りを上げたモーター音が近付いてくる。バイクかと思うとそれは花見客を乗せたボート。青汁よりも悪そうな色をした目黒川に白い波をほどほどにつけて、ヴーヴー言いながら去っていった。開花宣言から満開までの早さも去ることながら、葉桜に散っていくまでも呆気ない。変な夢を見た後のようなざわつく思いがした。


年度末。退勤するときの挨拶は年度末のそれじゃなかったな、と帰りのエレベーターを待つ間に早速反省会を開いた。エントランスを抜けると生暖かい風が全身をぬめっと這う。これが春の実感のリアルな気がする。春は変なことを考えやすい。変なところに視点を合わせやすい。知らない人に睨みつけられやすいが、ある人曰く、私の視線は、相手にとっては睨まれていると感じることがあるらしい。電車の中でどこに視線を合わせればいいのか分からなくって、すぐ上の液晶画面を見る。半ばポルノみたいなアニメゲームのCMが流れて、すぐに隣の液晶「次は目黒」に目を移したり、スマホを取り出してSNSをなんとなくリロードしたりする。女性への盗撮と疑われないよう、スマホのカメラを指で隠しながら操作するし、痴漢と疑われないよう、混み始めたら両手を挙げ吊り革を握る。


コロナが流行ってから、東京は今、いちばん混んでいる。それに安心したり、喜ばしく思えたり、楽しいと思える人が東京を活性化させているんだろうなあ。