決して手抜きではない

今年はじめてかき氷を食べた。
机の上で、威圧感を漂わせながら、でん、と佇んでいる。氷が硝子の器の倍は積み重ねられていて、抹茶味のシロップが、殴りつけるように荒々しく掛かっている。かき氷を食べるときに、存在感なんて考えたこともなかった。それも、以前コメダ珈琲店で食べたダルマのようなそれだって感じなかったものを。
それは、きっと、今年になってはじめてかき氷を見たからだろう。かき氷を食べるとしたら、年に1、2度、多くて3度くらいのもので、そうしたら、最後に見たかき氷の姿なんて、すぐに忘れてしまうだろう。
で、私はすっかりかき氷のスケールを忘れてしまった。そっか、かき氷って、デカいな。ほんの少し物怖じした。美味しそうだけど、涼しそうだけど、食べられるかな。
宇治金時の、さしずめ氷山に、スプーンで切り崩していく。さくっさくっ、と音も立てずに耳にした気になった。それでいて、スプーンは力を入れずとも、氷山の中へ中へと沈んでいきそうにも思えた。あ、これ、私は知ってるよ、鮮度がありながら柔らかくてふかふかだってことは、口の中でとろける、いつの間にか平らげている、相当美味しいかき氷だよ。いける。食べよう。食おう。絶対美味いって。さあ、口に入れよう。白玉も、餡子も、私を待っているぞ。よし、いくぞ。



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