空想・スケッチ・ふきだまり

恋がこれほどまでにひとを苦痛に陥れる病であり、かつ、古代から不変の大病であるならば、すでに、それだけで、この時代まで生き永らえた人間という生き物が、強靭で愚直なものだと、きっぱり証明できてしまう
[2017/08/29]


人間は強靭で愚直なるいきもの、だからなんだ、わたしは弱く小賢しい、知らない町に行き着いて、雪が頬にあたるのを、わたしの火照りを奪うのを、黙ってみていろというのか
[2017/12/05]


おとなとは、その両手に自由があることをはたと知った、そのあとを指すのだろう、ひとまずは、わたしがわたしをおとなと名乗る自由を行使してみる、縁もなかった名もない街に住んでみる、ああ、おなかが空いた、おなかが空いたよう
[2018/02/28]


月が燦然と照らす、郊外の町を、空いた電車内を、網膜を、記憶を、情の一部を、告げずにはいられない、打ちあけずにはいられない、懺悔を、秘密を、独白を、わたしには恨まれたいひとがいます、21世紀がきれいに消えた世界まで、どうか月の裏側で仕舞っていてください
[2018/03/01]


わたしの書く文章に嫌悪を抱く、わたしの書かれたものに拒絶がある、ナイフで刺すような文章ではなく、ナイフで刺された文章だ、こんなもの、こんなもの
[2018/03/02]


わたしはわたしの文章がすきできらいだ、わたしの産み落としたものである以上、鏡にうつったそのものと同様に、すきでありきらいである自由も、すきにもきらいにもなれない不自由も保障されている、わたしはすきできらいないきものなのだと言っている
[2018/03/02]