2021/04/02 夜の自転車散歩の記録

昨日今日は体調が悪く、家の中でボーっとテレビ西武戦中継を眺めているだけで終わろうとしている。気力がなかなか湧きにくく、よりボーっとしていたが、たった今西武がホークスに勝って試合終了し、気分よくブログを書くに至った。


とはいえ、昨日も今日もさして触れるような話題がないため、一昨日の自転車散歩のことを書こうと思う。



仕事を終えて帰宅して、すぐに自転車のタイヤに空気を入れた。ライトの電池も足りている。雨もこの先降らないだろう。ちょっと気持ちがはやりながら出発。はっきりとした目的地はいつも決めておらず、いつもマンションのエントランスを出た瞬間か、ちょっと走りながら決めている。今日は東へ進む。夜の都心へ。桜並木は花吹雪、そして路面は桜のじゅうたん。昼間、先輩が言っていたことを思い出す。桜の花びらでスリップしやすい、そんな季節の真っ只中で、私も気を付けながら走った。


平日夜の東京の交通事情は、渋滞しているか、猛スピードか、まったく閑散としてるかのいずれかだ。走っていて怖い道は様々ある。青梅街道や新目白通り、環七・環八など、渋滞ほどでないボリュームで猛スピードでひっきりなしな道があれば、早稲田通りや大久保通り、淡島通り、世田谷通りといった、狭くて車も溜まる、バスも歩行者も多い道もあり、移動には欠かせないが走りにくい道がたいへん多いのだ。逆に走りやすいのは山手通りと都心部の広めな道。内堀通り、祝田通り、日比谷通り。とくに、夜の半蔵門から日比谷へといたる内堀通りはたいへん気持ちがいい。左を見れば、高層ビルの明かりがお濠の水面に煌めいている。右手にはライトアップされた国会議事堂。それを肴に坂へと身を預け、一気に桜田門へ下るのだ。



さて、与太話から目覚めて、一昨日へ。
新目白通りを東へ進む。下落合の長い下り坂を行き切って、西武新宿線と並走しながらエステー本社を抜けJRのガード下を潜って、高田馬場を通過。ここからしばらく神田川にくっついて走る。さぞ桜は綺麗だっただろう名残を感じながら、都電の線路を渡って面影橋へ。徐々に、私よりもっと若い人たちをよく見かけるようになった。今年度は入学式が行われるのだろうか。東京に戻ってこれる大学生も多いのだろうか。都電の終点・早稲田を抜けると、車線が一気に広がって、解放感。空が広く気持ちよく走るのもつかの間、江戸川橋からは首都高が頭上を占拠して、このまま飯田橋まで。神田川ともここでお別れ。川の上に首都高があるかないかで、まったく違う顔を見せるものだとつくづく思う。飯田橋交差点で右に折れて、外堀通りへ。左側には散り気味の桜越しにお堀と中央線が並走。そこだけ真っ暗な空間に、電車の照明が白くつらなって、ちょっと冷やっとした風情があった。

 


市ヶ谷のごちゃごちゃした交差点を抜け、坂を上って四ツ谷に到着。新宿通りとの交差点。ここから新宿に折れて帰ろうかな、と思ったが、なんとなくもう少し漕いでいたかった。直進する。なんだか急に暗い雰囲気になった。公園の横だろうか、少しひんやりした。ほどなく二又に別れ、左に折れる。すると、目の前には巨大オブジェのように高架の曲線を重ね捻じらせた首都高が。その下に滑り込むようにして、長くて急な坂を下り、気持ちよくオレンジ色の道路照明灯を浴びていると、赤坂見附に着いた。この街は、そこだけへこませたような谷になっている。赤坂見附から西に行こうとすると、自転車では厳しいほどの急坂。引き返すにも、いったんこの街を抜けないといけない。間違えちゃったかな、と思いつつ、そのまま外堀通りを行く。夜の日枝神社を通り過ぎる。ここもしんとしている。この一帯に感じる暗さや妖しさは、どこから来るのだろう。

 


虎ノ門から、官庁がひしめく霞が関に。ここで働いている人はみなエリートなんだろうか。国家の中枢を担っている人々が地下鉄入り口に向かうのをすり抜けて、祝田橋へ。皇居に着いた。静まり返る皇居と、丸の内と帝劇などの、モダンな琥珀色のネオン。それを二分する日比谷通りの柳の木の下を自転車でシャーと走らせていると、私は今どこにいるのか分からなくなってくる。そうやって呆けているうちに、東京駅へ。ここはいつ行っても、どっかでウェディング撮影がされている。長く漕いで疲れた。ベンチに腰掛ける。近くでコンテンポラリーダンスの練習に興じる者がいた。丸の内のハイソで格式高いビルに囲まれながら踊る姿が作品のようだった。反対側では、缶チューハイで乾杯する若い会社員グループがいた。この辺りで働いているのだろうか。丸の内にいても、あまりに気持ちが遠すぎて、豪華な舞台のセットの中に置かれた人形になった気分だった。

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身体の熱も引いていったので、そろそろ帰らなければ。自転車を跨ぐと、足がやたら重たく感じた。丸の内で夢を見ていたホワホワを抱きながら、帰路に就いた。走らせるほど、少しずつ私の知っている街になっていった。