【散文詩】硝子

朝霧にかかる灰が
車窓から薄桃色の街を映しだし
煙突から浅緑の煙がのぼる


電波塔から発された電子の粒が
やがて雨となり街に降り注ぐ




割れた硝子の一片を拾い上げた


丘の先はまた丘
苺畑を抜け葡萄は香り
辿り着いた白樺の森
私は今もここにいる



枝垂れ柳の葉先を遊ぶ風に
艶やかな光の流線が見えた
これは私の信じた光
母の面影



濃霧は緑
電子の雨
絶え間なく香り
絶え間なく知る

尖る硝子の冷たさを



打上花火
しなだれた火の粉と
空気中に焦げた煙の匂いが残った


掌に一欠片の硝子