梅雨の前

傘を持たず家を出て、行きの電車で雨が降り始めた。午前9時すぎの電車は急に本数が減るが、乗客の減り具合と釣り合わない。山手線渋谷品川方面行き。無理にでも乗り込み、ドアにへばりつく。高田馬場に着くと、さらに混んできた。早稲田大学の学生をしている友人は、高田馬場が好きでない、と言っていた。私もよくわかる。高田馬場には慣れない。新宿から池袋までのひと駅でも、埼京線を使う。
新宿で多くの乗客が吐き出された。その勢いに押され、私もホームに出たものの、車内に戻る気になれなかった。雨は止む気配がない。梅雨のような静かな雨は長い。
湘南新宿ラインのホームへ。座れた。動悸が落ち着くや否や、眠気が襲う。目がさめると目の前には相模湾が広がっていた。
ものを書きたくなった。創作でも散文でもなんでも書きたい。私の書くものに意味付けがなければないほど達成感がある。対向列車が来ない。帰る気にならない。駅を降りる気も起きない。電車を待つのも嫌になる。雨が線路に打ち付ける。いい加減頑張らなくていいと諭すような静けさが怖い。