現代の表情

夜の寂しい街灯は、澄んで尖った私の思考に、影をつくった。肉体も感情も、近年の白色LEDではてんで映し出されないみたいだ。


帰りの電車内、無数の帰宅者のひとりの、吊革を掴む手の緩んだその一瞬に、その人の心が現れるのだと思う。

朝のラッシュの詰め込まれた人々の顔は、失いに都心部へ向かう現代の表情をしている。しかし帰りの電車は、みやな軒並み人くさい。暖色ばった表情で、眠気と現実とを行き来しながら、仕事の締めに、今夜も吊革を確保する。きっとなにかを奪い返せたのかもしれない。戦争から逃げ帰る昂奮によるものかもしれない。ただそれぞれに人のにおいがする、それは愛の一分子に相応しいことだろう。


心というものは、もはや正攻法では開示されない、機密情報の体裁をとってしまった。それは私のせいだろうか、あなたのせいだろうか、みんなのせいだろうか、濃霧の社会が引き起こした惨劇の展開期だろうか。